幼児教育の編集者ノート Vol.10 園は誰のものなのか。
幼児教育の編集者ノート Vol.10
園は誰のものなのか。

― オーストラリアで考えた、保育と経営の距離 ―
35年前、名古屋文化学園はオーストラリア・ゴールドコーストに附属園「オージーキッズ・マーメードウォーターズ」を開設しました。
以来、この園は本学園の海外実習や国際教育の拠点として、多くの学生を迎え入れ、育て続けてきました。
私たちにとって、この園は単なる「海外にある保育園」ではありません。
学生が世界の保育を学び、子どもたちと出会い、日本とオーストラリアをつなぐ、大切な教育の場です。
一方で、オーストラリアを訪問するたびに、現地の教育関係者の案内でさまざまな園(チャイルドケアセンター)を見学する機会があります。
そこで、日本ではあまり耳にしなかった話を聞くことがありました。
「この園は数年前に別の法人が運営を引き継いだ園です。」
「この法人は積極的に園を増やしています。」
「園を整備し、その価値を高めながら事業を展開している法人もあります。」
最初にその話を聞いたとき、私は正直、驚きました。
保育園は、子どもたちが毎日を過ごし、地域の人たちから信頼される場所です。
だからこそ、「園が売買される」「運営する法人が変わる」という話に、少し戸惑いを覚えたのです。
しかし、何度も現地を訪れ、多くの園を見学し、関係者の話を聞くうちに、その見方は少しずつ変わっていきました。
もちろん、利益だけを追い求める経営であれば、不安を感じることもあります。
一方で、規模の大きな法人だからこそ実現できることもありました。
職員研修を充実させること。
新しい設備へ投資すること。
複数の園が連携しながら保育の質を高めること。
人材不足の園を支える仕組みをつくること。
保育の質を守るためには、理念だけでなく、安定した経営も必要なのだと感じました。
日本でも、少しずつ状況は変わり始めています。
少子化や経営者の高齢化、後継者不足などを背景に、長年地域で親しまれてきた園が、別の法人へ引き継がれる事例も見られるようになりました。
保育を取り巻く環境は、これまでとは違う時代に入りつつあります。
だからこそ、最近よく考えることがあります。
「園は誰のものなのだろう。」
学校法人だから安心。
社会福祉法人だから安心。
株式会社だから心配。
そんな単純な話ではないように思います。
本当に大切なのは、
子どもたちが安心して過ごせること。
先生たちが誇りを持って働けること。
保護者や地域から信頼されること。
そして、その園の理念が受け継がれていくこと。
そこにあるのではないでしょうか。
名古屋文化学園は、30年間、オーストラリアの附属園を教育の場として大切に育ててきました。
一方で、現地ではさまざまな経営の形にも触れてきました。
その経験から感じるのは、「どの経営形態が正しいか」ということではありません。
どのような形であっても、子どもを真ん中に置き、保育の質を高め続けようとしているかどうか。
そこが最も大切なのだと思います。
園は建物ではありません。
子どもたちが笑い、泣き、成長し、先生が学び、保護者や地域との信頼が育まれる場所です。
その価値は、誰が所有しているかだけで決まるものではなく、そこで積み重ねられる時間や、人と人とのつながりによって育まれていくのではないでしょうか。
編集者ノート
私たちは30年間、オーストラリアの附属園を「投資先」としてではなく、「教育の場」として育ててきました。
学生たちが国境を越えて学び、新しい保育観に出会い、自分自身の視野を広げていく。
その積み重ねこそが、本学園にとって何より大きな財産です。
だからこそ、これからも問い続けたいと思います。
園は誰のものなのか。
その答えは、「所有者」という言葉の中ではなく、子どもたちの未来を見つめた先にあるのではないでしょうか。
















