成長は、結果の中ではなく途中にある。
幼児教育の編集者ノート④
成長は、結果の中ではなく途中にある。
保育の現場では、こどもたちの【できた】の瞬間に立ち会うことがよくあります。それは、保育者としての最も幸福な瞬間の一つかもしれません。
昨日までできなかったことが、今日できるようになる。
ボタンを留められるようになった。
跳び箱が跳べるようになった。
友だちに「貸して」と言えるようになった。
その瞬間は本当に嬉しいものです。
でも、少し立ち止まって考えてみると、その「できた」の裏側には、もっと長い時間があります。
何度も失敗した時間。
やってみては諦めた時間。
友だちの様子をじっと見ていた時間。
周りの大人が気づかないうちに、少しずつ力を蓄えていた時間。
成長は結果の瞬間に起きたのではなく、その前からずっと始まっているのでさないでしょうか。
先日、コロンビア大学の心理学者キャロル・ドゥエック氏らの研究について読んでいました。
その研究では、こどもたちを二つのグループに分け、一方には
「頭がいいね」
と能力を褒め、もう一方には
「よく頑張ったね」
と努力や過程を褒めました。
すると、その後の課題への向き合い方に違いが現れたそうです。
能力を褒められたこどもたちは、自分が失敗して能力が低いと思われることを避けようとする傾向が見られました。
一方で、努力や過程を認められたこどもたちは、より難しい課題にも【挑戦】しようとする傾向が見られたといいます。
私たちは、いつの間にか結果ばかりを見ていないだろうか。
テストの点数。
資格試験の合否。
順位。
評価。
もちろん結果は大切です。
けれど、人が育つ過程は、もっとゆっくりで、もっと複雑です。
できなかったことに挑戦したこと。
失敗してももう一度やってみたこと。
友だちを真似してみたこと。
誰かに励まされて一歩踏み出したこと。
そうした時間の積み重ねが、ある日【できた】という形で現れる。
結果は目に見えます。
でも、成長そのものは、その前の見えない時間の中にあります。
保育者は、その見えない時間に寄り添う仕事です。
まだできないことを責めるのではなく、これからできるようになる力を信じる。
結果が出る前の小さな変化を見つける。
そして、本人さえ気づいていない成長を言葉にして伝える。
保育者は、まだ花が咲いていない時間を信じる仕事なのかもしれません。
花が咲いた瞬間は、多くの人が見ることができます。
けれど、その花が咲くまでの毎日に目を向け、その成長を支えている人はそれほど多くありません。
そして、その時間を信じられる人がいるからこそ、こどもたちは安心して育っていけるのだと思います。
AIがますます進化し、結果を素早く出せる時代になりました。
だからこそ、人が育つ過程に目を向けることの価値は、これまで以上に大きくなるような気がしています。
成長は、結果の中ではなく途中にある。
保育の現場は、そのことを毎日静かに教えてくれています。

















