失敗する権利
幼児教育の編集者ノート⑦
失敗する権利
名古屋文化学園のパンフレットに、私が好きな言葉があります。
「失敗したって大丈夫!」
附属幼稚園で行う基礎実習を紹介するページに書かれている言葉です。
保育者を目指す学生にとって、実習は楽しみであると同時に、不安も大きいものです。
こどもたちとうまく関われるだろうか。
先生としてふさわしい対応ができるだろうか。
失敗したらどうしよう。
そんな気持ちを抱えながら実習に臨む学生も少なくありません。
だからこそ本校では、いきなり本番の教育実習や保育実習に向かうのではなく、隣接する附属幼稚園で少しずつ経験を積んでいきます。
園舎見学。
こどもたちとのふれあい。
観察実習。
給食実習。
参加実習。
指導実習。
段階を踏みながら、保育者としての第一歩を学んでいきます。
校長先生はよく、
「たくさん失敗しなさい」
と話されます。
少し意外に聞こえるかもしれません。
私たちは子どもの頃から、
失敗しないように。
間違えないように。
と言われることが多いからです。
しかし、学びの過程においては、失敗は避けるものではなく、成長に欠かせないものです。
ただし、失敗することそのものに価値があるわけではありません。
大切なのは、
安心して失敗できる環境
です。
笑われないこと。
否定されないこと。
もう一度挑戦できること。
誰かが見守ってくれていること。
そんな安心感があるから、人は新しいことに挑戦できます。
挑戦するから成長します。
これは幼児教育の世界でも大切にされている考え方です。
背の高い遊具に挑戦する。
友だちとけんかをする。
工作が思うようにできない。
運動会で転ぶ。
発表会で台詞を忘れる。
その瞬間だけ見れば「失敗」に見えるかもしれません。
でも、その経験を通して、
どうしたらいいか考える。
助けを求める。
やり直す。
気持ちを立て直す。
そんな力が育っていきます。
実は社会に出てから本当に必要なのは、失敗しない力ではなく、失敗から立ち上がる力なのかもしれません。
考えてみれば、歩き始めたばかりのこどもも何度も転びます。
それでも誰も、
「向いていないから歩くのをやめなさい」
とは言いません。
転びながらバランスを覚えます。
失敗しながら身体の使い方を覚えます。
保育者になる学生も同じです。
最初から完璧にできる人はいません。
こどもとの関わり方も、言葉かけも、実際にやってみなければ分からないことばかりです。
だからこそ、本校の附属幼稚園は大切な学びの場なのだと思います。
以前、この連載で
「保育者は、まだ花が咲いていない時間を信じる仕事なのかもしれません」
と書きました。
失敗しているように見える時間も、実はその一部なのだと思います。
うまくいかない時間。
悩む時間。
自信をなくす時間。
しかし、その時間があるからこそ、人は成長します。
保育者は、その成長を信じて待ちます。
附属幼稚園が隣にあるということは、
安心して失敗できる場所が隣にある
ということでもあります。
そして、それはとても贅沢な学びです。
保育者になるために必要なのは、最初から完璧であることではありません。
失敗を恐れず、一歩踏み出すこと。
そして、失敗から学び続けること。
本校が大切にしているのは、そんな成長の姿なのだと思います。

企画広報室 松野
















